遠い約束


懐かしい夢をみた。

広い球場・・・
甲子園の文字・・・

目の前で、大好きなアイツが笑ってた。

アイツの手の中にはさっき手に入れたばかりのウィナーボール。
そのボールを私に押し付けて・・・
もうすぐしたら、アイツは言う。
顔を真っ赤にして・・・

「今度は俺がお前をここに連れてくるからな!」

小学生だった私は、そのことばに嬉しそうに頷いた。


そこで私は目が覚めた。

(あれから何年たったんだろう・・・?)

今朝みた夢を思い出し、少し微笑みながら学校への登校路を歩く。
登校時間より少し早いため、ゆっくりと歩くこの道には今は私一人しかいない。
ちょっぴり立ち止まって、朝の新鮮な空気を胸一杯に吸い込む。
この朝の登校する時間は私のお気に入りの時間ベスト2位に入っている。
周りを見回しても誰もいない私だけの静かな道、その道をまるで包むみたいに
薄っすらとした白いもやが毎日通るこの道を少しずつ違ってみせる。
自動車が立ち入り禁止だから、その道の真ん中を歩くと
もやが退き、まるで私のために自ら道を開けてくれているみたい・・・

少し足早に歩き出した私は今朝みた夢をもう一度、頭の中で思い描いた。

広い球場、初めてそこに行って目を見開いて驚く私の隣にはいつも一緒の幼馴染のアイツがいて。
呆気にとられている私にアイツが教えてくれた。
今まで聞いた事のないほど喜色満面な声色で・・・

「阪神甲子園球場っていうんだぜ!!すごいだろ!!」

そういうアイツは帽子を深くかぶっていて表情はあまり読み取れなかったけど、そのことばで大体の想像はついた。
帽子で見えない目を輝かせて私と一緒でわくわくしてるに決まってる、ちょっと生意気な口の利き方は今とぜんぜん変わってない。

クスッ、っと笑みが漏らしながら校門を通ると私は教室に向かわず、グランドの方に足を進める。

金網のフェンスの隙間からグランドをみると、すぐに私はアイツをみつける。
いつもは滅多に見れないほど集中している、アイツの姿を・・・。

(・・・なにかに集中してるといっつもまわりがみえてないんだよね)

そんなことを思い、苦笑をもらしながらアイツの背中をみつめていると
静かだった校舎がだんだんと、登校してくる生徒達によってにぎやかになっていく・・・

・・・8時

「ありがとうございましたっ!!」

野球部が整列してグランドに向かって一声・・・
朝の練習はこれで終わり・・・

!!」

少し待っていると、制服に着替え終えた部員達が校舎に入っていくのがみえた。

アイツは校舎のほうには向かわず、私の元に来てくれる。

アイツ・・・秋山渉は。

それが私の朝の始まりのような気がする

「お疲れ様、渉。教室いこっか?」

そう笑って言う私に渉も笑いながら

「いつも待っていてくれてすまないな」

・・・って、いいながら一緒に教室まで歩き出す

授業が始まって、チラッと渉の方をみると少し頭を抱えて、またすぐに問題を解き始める・・・
そんな渉に負けないように、私も黙って先生の話を聞いていく。

一日の科目が全て終了すると渉は、また着替えてグランドへ・・・
一瞬、目を合わせて、私はグランドのよく見える図書館へと足をすすめる。

一番、窓側の席が私の指定席・・・

(読みかけだった本まだあるかな・・・)

目当ての本をみつけ、席に戻ってくる頃、野球部は練習を開始する。

しばらく本を読んで、ときたまグランドを盗み見る・・・

背番号・・・6番、渉のポジションはピッチャー・・・

そしてまた、本に目を向ける・・・

ガラガラ・・・っと、音がして図書館の扉が開いたけど、私は本から目を離さなかった。

、練習、終わったぜ」

声のする方向に顔を上げると、案の定、隣りには渉がいた。

「もうそんな時間か・・・」

そう呟くと、早く帰ろうと渉が図書館の出口で私を待っていてくれた。

小学校からずっと同じクラスだった私たち・・・
家も近かったせいかよく一緒に帰って、一緒に遊んで・・・
自然と、渉の隣りにいるのが当たり前になっている。

今日の練習はどうだった?、など、会話を交わしながら渉と帰るこの時間・・・

それは小さい頃からの私の一番のお気に入りの時間・・・

少しすると、渉が立ち止まった。

いつになく、真剣な表情の渉に顔を向けると・・・
渉はゆっくりと口を開いた

「次の日曜日から高校野球の予選が始まる・・・」

甲子園に行く切符がかかっていると続けて言う渉。
高校最後、渉は忘れちゃったかも知れないけど、私との約束のかかった、試合・・・

「私、応援に行くからね?がんばってよ」

「そのことなんだが・・・
そういって渉は下を向く、しばらくして真っ直ぐに私の目を見て渉は信じられないことを言った。

・・・お前は、観に来るなよ」

はっきりと言い放った渉の瞳は嘘を言う目じゃなかった。

ポタっと路面に水滴が跡をつける、そのころにはもう渉の顔が歪んで
私にはよく見えなかった。

・・・」

なにかを言おうとしている渉を背に、私は走った。

この日、家までの道がやけに遅く感じた。

自分の部屋に駆け込むとドアの前に座り込んで泣いた・・・。
渉の前で込み上げてきた涙、それはただの序章
抑えていたはずのものが一気にあふれ出す・・・

「なんでぇ・・・?なんでなのぉ・・・っ?」

涙と一緒に漏れたそんな私の呟きは薄暗い部屋の中にとけこんで消えていった・・・


それから何日経ったかなんてわからない・・・

友達の話では、渉たちは順調に勝ち進んでいるということだけ・・・。

こんなに渉と会わない日が続くのは初めて。
たぶん、お互いが会わないように意識しているようにも感じる。

図書館にも、よってない・・・。

毎日、逃げるようにして家に帰る・・・。

それは今日も同じ・・・

「なぁ、うちの野球部さぁ、次決勝なんだろ?行けるかもしれねぇな、甲子園!」

校門を出ようとした私にそんな会話が聞こえてくる。

(そっか・・・次、決勝なんだ・・・)

また、涙が出てきそうになるのを私は必死でこらえた・・・

・・・涙は出なかった。

「すごいんだろ?背番号6のピッチ!」

興奮気味で聞こえる男子の会話・・・

(渉、頑張ってたもんね・・・練習・・・)

後ろの男子の話に気を取られながらも家までの道のりを歩く

話によると決勝戦は来週の日曜・・・

土曜日まで悩んだ結果、私は球場へと足をむけた・・・

(来るなって言われても・・・こればっかりは・・・)

観客席の後ろの方でグラウンドをみつめ試合の開始を待つ

大勢の観客で渉が私を見つけることなんか出来ない・・・

試合開始の直後、先行の私たちの学校が先制点を取った。

流れはこっちに向いているはず・・・

はじめの一点以外、両者とも一歩も引かず激しい攻防戦を繰り返す・・・

そうして五回裏・・・ランナー二塁

センターにとんだフライ・・・

そのボールを捕らえきれなくて、ボールは地面に当った・・・

1−2・・・流れがかわった

それから点は変わらず八回表・・・ホームランで2−2

だけどそれっきりで・・・

八回裏・・・ワンアウト・・・

(がんばって・・・渉!・・・巻き返せるよ)

ストライク・・・大声を上げる審判の声・・・

次のボールを投げる渉・・・

キャッチャーミットに納まるはずのそれは・・・
大きく宙に弧を描いて、必死にボールを取りに走っても
グローブにボールが入る頃・・・もう相手はホームベースを踏んでいた・・・

・・・3−2

追いついたはずの点がまた開き
勝負は九回表へ・・・

初回、ホームランを出したバッターがランナーへと・・・

一塁、二塁へと、次々ランナーがつき・・・
次のバッターは、四番のエース・・・

ファースト側に打ったヒット

3−3で点は並んだけど、2アウト・・・

虚しくも次のバッターはアウト。

同点で持ち込んだ九回裏・・・

鍵となるのは渉のピッチ・・・

バッターとのさしの勝負・・・

(きっと・・・大丈夫・・・渉なら出来るよ)

いつかの帰り道、私が渉に言うとアイツは笑った。

そんなことばを何度も心に念じて、食い入るように渉をみつめた・・・。

1アウト・・・

フッ、と空を見上げた渉・・・

(なにをしてるんだろう・・・?)

そんなことを思っていると観客席に目を向けた渉と目が合った気がした・・・

あとバッターは二人・・・それを倒せば甲子園・・・思い出の場所

「渉ぅ〜〜〜っ!!!!!あと二人だよ〜〜っ!!!」

いてもたってもいられなくって・・・気付いたら私は大声を出していた

もう一度、顔を上げる渉・・・

次に投げたボールは一直線にキャッチャーミットへ

「あと一球!!」

そう叫ぶ、私・・・

ラストのバッター・・・

ゲームセットの声

喜び満ちた渉の顔をみて・・・私は球場の出口へと向かった

「おいっ!」

久しく聞いていなかったその声がやけに懐かしくて・・・

振り返ってみた渉の顔にもう何年も会っていなかったような錯覚を覚えた。

「なんで来たんだよ、来るなって言っただろ?」

汗まみれの渉から発されたことばは、私の心に雨を降らせた・・・

「だって・・・渉の頑張ってるとこみたかったのっ・・・一番近くでっ・・・」

抑えた涙が頬を伝い・・・真っ直ぐに渉の顔がみれなくて俯く私。

「・・・」

何も言わずに泣き続ける私をみて・・・

渉は私を・・・抱きしめた・・・

腕の中泣く私に静かに渉は言った。

「覚えてるか・・・?ずっと前の約束・・・」

甲子園の・・・っと続ける渉の声に、約束を覚えてくれていたという喜びで涙が増す。

「これでやっと果たせる・・・」

そう言って渉は私の耳元に唇を近づけて囁いた・・・。

「一緒にいこうぜ、甲子園・・・俺の、一番近くで観ててくれ・・・ずっと、な?」

そのことばに頷くと、渉はギュッと腕の力を強くした・・・


甲子園・・・

「来たね・・・甲子園」

「そうだな・・・」

目の前にした広いグランド・・・

幼い頃、二人でみたこのグランドに二人で帰ってこれた。

ピッチャー、背番号、6番・・・秋山・・・

そんなアナウンス・・・

いってくる・・・とベンチからポジションに向かっていく渉の背に

私は、うん、と呟いた




あとがき

R「おひさしぶりで〜す」
渉「・・・久しぶりでなに書いてんだよ・・・お前」
R「秋山渉ドリーム・・・?」
渉「文才なしめ、なんだよこれ・・・」
R「やかましい!野球観てて頭の中で野球=甲子園、野球=渉になっちゃったの!!」
渉「リク溜めてるくせになにやってんだよ・・・最後の俺と野球はかんけいないだろ」
R「いいの!慎吾の部活夢書いたら他のキャラの部活夢書きたくなったの!!」
慎「授業聞かずにずっとこのキャラは〜部とかいってたもんな・・・お前」
啓「迷惑だっての・・・」
R「なんか言ったかい?啓介・・・知らないよ、そんなこと言っちゃっても・・・(ニヤリ)」
啓「うっ・・・(寒気)」
渉(墓穴掘ったな・・・)
慎(口は災いの元・・・)
R「・・・みてなさいよ、啓介・・・フフフッ」
渉「苦情はメールで、感想はbbsで頼む」