小さな私と・・・
カラカラカラカラ・・・
地球はまわる。
世界がまわる。
一定のリズムで・・・
まるで、ルーレットのように
カラカラカラカラ・・・
たとえ、私が地上から消えても
その流れは止らない・・・
私が居ても居なくても、なんの変化もしない、この世界。
そう、それは、まるでルーレットのように・・・
カラカラカラカラ・・・
目の前に広げた、第三回進路捜査のプリント。
三回目という数字が、やけに大きく感じて
残された高校生活も、あとわずかだという事を身をもって感じる。
古びた校舎、よくサボりに行った保健室の白い壁、怪談話で盛り上がった音楽室・・・
そして、教室の自分の机の隅のラクガキ・・・。
思い返せば、たくさんの思い出が顔を覗かせる。
だけど、私に本当の居場所はあったの・・・?
どの思い出を振り返っても、いい思い出ばかり
なのに、そこに本当の私はいなかったように思うときがある。
卒業が近づくたびに、急かされる進路捜査・・・
自分は、何処に向かうの?
自分の進路も決められず、まわりはドンドンと私を置いて行く。
別に成績が悪いわけじゃない、校内の成績ならトップ3に入ってるくらい・・・
・・・でも、何かが足りない。
私にはキチンとした目標がない。
これから先、自分はどこを受験し、職業としてなにを選ぶのか・・・
全く検討がつかない自分の未来・・・
こんなんじゃダメだといくら思っても、私は未だに迷っている。
着々と進んでいくタイムリミット・・・
一日の終わりを告げるチャイムは、空っぽの私の心を一陣の風となって過ぎ去っていく。
家に帰っても、頭の中はそのことばっかり
気持ちの焦りに、わずかな時間が追い討ちをかける。
こんな私に、存在価値なんてあるのだろうか・・・
・・・私は、本当に存在しているの?
そんなことを思った瞬間、私の目の前は真っ暗になった。
「また・・・やっちゃった」
右手には、金属製の何かを持っているような冷たい感覚・・・
左の手首からは生暖かい赤い色の液体が伝っている・・・
自分の血液がポタッという音とともに、床に落下し
その部分に、赤く丸い染みを作っていく。
手首の傷を舐めると、しょっぱい鉄の味がした。
こんな行為を何日か置きに繰り返し、私は自分自身の存在を確認した。
自分自身の存在を確認したかっただけ、死のうとなんてコレッぽっちも考えてはいない。
私には、幼馴染がいる。
とっても綺麗で頭が良くて、将来は、おうちの病院を継ぐらしい。
将来有望、自分の未来を決め、まっすぐに歩いていく彼は、こんな愚かな行為をする私を知らない。
彼には、知られたくない・・・。
涼介だけには・・・。
そんな思いを頭に残し、腕を宙にかざすように伸ばし
私は眠りについた。
次の日の朝、昨夜のことを心の中に閉じ込め。
何食わぬ顔で、学校に向かう。
いつから学校に向かう足が、重く感じていたのだろう。
今まで感じたことのないようなプレッシャー・・・
回りから聞こえる声が一つ一つ鉛のように自分の心に溜まっていく。
「・・・ぃ、おいっ!」
不意に聞こえた声に振り返ると、そこには涼介がいた・・・。
しばらく私に声を掛けていたのか、
やっと振り返った私の顔をみて苦笑を浮かべている。
「おはよう、
」
「おはよう、涼介」
いつもと変わらぬように挨拶を交わし、
学校までの道のりをゆっくりと歩いていく・・・
だけど、その動作にも私は以前とは違う違和感がしてならなかった。
(気持ちの持ちようかな・・・)
そんなことを考えながらか、涼介が口にしている話の内容は
全くと言っていいほど、私の頭の中には入っていなかった・・・
教室の扉を涼介が開け、二人とも自分の机に向かう・・・
いつもと同じこと・・・
でも、ちょっといつもとは違う・・・
気付かないうちに、私の机の前には涼介が立っていた
「お前、やっぱり具合でも悪いんじゃないか・・・?」
呆れたような、心配したような、そんな顔で私に問いかける
「な、なんでもないよっ!元気だからさ!!」
元気なかったら私じゃないでしょ?!、なんてことを言っていると
涼介は笑ってくれた・・・。
幼い頃から、そんなに声を出しては笑わないけど
見知った、その笑顔は私の好きな物の一つだった・・・
でも、今は、その笑顔がただ、ただ痛かった。
いつから私は、こんなことを思い始めたのだろうか・・・
朝のホームルームの終了後、
今日中までに進路捜査を提出するように言って
教室を出て行った先生・・・
結局、白紙で持って来てしまった用紙は、
私のカバンの中にある・・・。
一時間目の数学T、二時間目の英語・・・
この日も変わらず過ぎていくのかと思っていた。
そして、今日も自分の答えを見つけられずに終わると思っていたのに・・・
三時間目・・・体育。
昨日は、今日体育があるなんてことは忘れていた・・・。
迂闊だったと私は思った。
体育の前日、私は昨日のようなことはしない。
授業中に倒れて、学校に・・・なにより
涼介に知れたら大変だから・・・。
でも、やっぱり神様は私に意地悪・・・
こんな日に限ってランニング。
しかも、グランド内では涼介やクラスの男子がサッカーをしている・・・
(まずいなぁ・・・)
何週目かのトラックに入り、ふっと、涼介のほうに顔を向けた
目が合い、微笑み返す涼介に私は何も返さず走った・・・。
何を思ったのか、こちらに涼介が駆け寄ってくるのが見えた・・・
その瞬間、私の目の前は暗く染まった。
意識を失う中、誰かの声がした気がする・・・
が、私にはもうどうでもよかった・・・。
ひんやりとした地面の感触が、熱くなっていた頬に気持ちが良い。
「・・・?」
つんっとした薬品の臭い・・・
だんだんと覚醒していく頭・・・
目覚めた時、私は誰も居ない保健室に居た・・・
身体を起こし自分の不甲斐なさに、シーツの一点を見つめる
(バカだな・・・私)
苦笑とともに、辺りを見回すとある物が
私の目にとまった・・・。
デスクの上の、銀色に光るカッターナイフが・・・
その光を反射している刃を綺麗だと思った
それを握る私の手は震えている・・・
手首にある傷、その度に私の手は震えていた。
プッツリという音の後から赤い鮮血が流れ出し腕から顔を上げると
立ち眩みがし、目の前が一瞬暗くなる。
頭の中の揺れる奇妙な感覚・・・。
何度繰り返しても、恐怖に似たその感覚に慣れることはなかった・・・。
だけど、私はこうしてしまう・・・。
そんな私自身を、愚かだと思いながら・・・
深呼吸をし、手首にそれを当て、力を込めようとしたとき
保健室の扉が開いた・・・
そこに現れたのは・・・涼介だった
私の分を含めた二人分のカバン。
たぶん、もうそろそろ、私が目覚める頃だろうと
向かいに来てくれたのだろう・・・
私を凝視して見つめる涼介の腕から、
その二つのカバンがバサリッと床に落ちた・・・
(見られた・・・!!しかも涼介に、知られた!!)
こちらに歩みを近づけてくる涼介の顔を見ることが出来なかった・・・
「何バカなことをやっているんだ・・・」
静かな保健室に涼介の声だけが響いた。
涼介は無言で私の手の中にあったカッターと取り、
もとのデスクに置いた・・・
そのあいだ、私はずっと下を向いていた。
「・・・っ?!」
不意に左手を引っぱられ、私は無意識に涼介の手を払った。
「見せてみろよ、腕・・・」
拒否を許さぬように聞こえた、その声は
いつもの涼介の穏やかな声とは違って
強く聞こえた。
無言で彼の前に腕を伸ばす・・・
涼介の手のぬくもりが腕から伝わる
「痛かっただろ・・・」
優しく傷を撫でながら彼が漏らした言葉に
涙が出かけた。
そっと、抱締められた感覚・・・
涼介自身のぬくもりが全身を包む・・・
その途端、堪えていたものが眼から零れだした。
「・・・心の方が、もっと、ずっと、痛かった。」
私が言ったことばに涼介はポンポンっと頭を撫でた。
「いいから、泣いておけよ・・・ごめんな」
「わかってやれなくて」、そういった涼介のことばが
今の私には何よりも暖かく思えた。
(回りが悪いわけでも、涼介が悪いわけでもない・・・)
私が・・・悪い。
でも、今はこうして泣いていたい・・・。
彼の腕の中で、私は滝のように涙を流した。
「目、赤く腫れてるな」
帰り道、涼介と並んで歩く。
あれから、今まで抑えていた分、泣いたせいか
私の目は、ウサギの眼になっていた。
でも、どこかスッキリしていた。
「自分でも、あんなに泣くなんて思ってなかったよ〜。」
ゴメンね、制服汚しちゃって・・・っと、
笑いながら言った私の顔をみて、涼介も笑った。
「そんなこと気にするな・・・もとに戻ったな」
「えっ?」
立ち止まった彼の方を振り返ると涼介は微笑んでいった。
「ずっと気になっていたんだ。
最近、お前の顔に笑顔が無かったからさ・・・。
笑っていても、どこか寂しそうな・・・
いつも見ていた、俺が大好きだった笑顔をみる機会がなくなった
本当に気付いてやれなくて、悪かった・・・。」
「謝らなくてもいいよ。
涼介が悪いんじゃないんだもん。
私が弱かっただけ・・・
でも、涼介が気にかけててくれるなんて
ぜんぜんわからなかったよ?」
私が言ったことばに彼は苦笑した。
歩き出そうとした私の背中に再び彼の暖かさを感じた。
「当たり前だろ、ずっと、お前の事をみていたんだからな。」
「好きだよ、ずっと前から、な」
耳元で囁かれたことばに、私は顔の熱は上昇した。
「思っても見なかっただろ?」
気付かれないようにしていたからな、と笑う彼の
腕を取りながら私は言った。
「私も大好きだよ? ずっと前から・・・」
お互いに微笑あって、また家路を歩き始める。
今度は二人、手を繋ぎながら。
傷だらけの私の手は、今、彼の暖かい手に包まれている。
カラカラカラカラ・・・
地球はまわる。
世界がまわる。
一定のリズムで・・・
まるで、ルーレットのように
カラカラカラカラ・・・
たとえ、私が地上から消えても
その流れは止らない・・・
私が居ても居なくても、なんの変化もしない、この世界。
そう、それは、まるでルーレットのように・・・
カラカラカラカラ・・・
時の流れから見た私は、あまりにも小さい。
だけど、私は前を向いて歩く。
不安になる時もあるけれど。
愛しい人と手を繋ぎながら
私は、これからも生きていく・・・。
☆あとがき☆
R「はい、みなさま、お久しぶりです・・・、RAYです。」
啓「ホント、よくココまで放置できんな、お前」
R「すいませんでした・・・ハイ;;」
啓「で、復活早々、話の内容暗くね〜か?」
R「痛い話でしょ・・・?」
慎「もちと、明るい話題は無かったのかよ?」
R「いやぁねぇ?今、現在の学生の気持ちを知ってなければ書けないかな〜って」
慎「苦しんでたもんな・・・」
R「まぁね・・・」
啓「で、次は誰の話なんだ?」
R「予定では京一さんです〜」
慎「須藤か、やっとだな」
R「本当に・・・」
京「うるさいな、お前が書かないからだろ。」
慎「ま、いいじゃねぇか。2本考えてあるんだからよ・・・」
R「そうですよ!!」
京「・・・調子に乗るな」
R「うぅ・・・」(逃亡)
慎「またかよ!!」
啓「ココまで読んでくれてありがとうな」
慎「感想はBBSで待ってるぜ〜」
R(メガホンで)「次は京一さんの部活があきらかになりま〜〜す!」