片方ずつのツバサ


キーンコーンカーンコーン・・・
キーンコーンカーンコーン・・・

「啓介、行こう!」

、行こうぜ!」

今日の最後の授業の終了を知らせるチャイムが鳴ると
まるで、それが合図だったかのように、俺たち二人は同時にお互いに声をかけ
同じ目的地を目指す。

確実に教室より大きさの違う大きな古い鉄の扉を
ギガギ〜ッという音を立てて開ける。
そこが俺たちの目指した場所だ。

その場所に足を踏み入れると、その場所独特といえる臭いが
俺たちを向かい入れる。
隅に置いてあるボールの入ったかご、跳び箱やマットが閉まってある倉庫。
前方にあるステージ・・・。
そして、扉と同じく、古びて錆び付いたバスケットゴール・・・。

俺がこの学校にある体育館に初めて訪れた入学式。
静まりかえった広いこの場所に一年の時から俺たちは誰よりも早く駆けつける。
3年たった今でも、それは変わらない・・・

ダンダンダンッ・・・
「ルールはいつも通り!!どっちが多くシュートを決められるかだ!!」

「OK!!負けた方が勝った方にジュース1本!!」

他の部員達がやってくる10分前後。
その短い時間の中、俺たちのバトルは開始される。
俺が のことばに頷くと の手元で規則的に弾んでいたボールが、そのリズムを変える・・・

すぐさま駆け出す俺を嘲笑うかのように が放ったボールはリングを潜っていた。

「へっへ〜ん!今日のファーストゴールはもーらいっ!」

自慢げに笑う の手の中に戻ったボールを奪いに掛かる。
今度は俺がシュートを決める・・・
からボールを奪って今度は俺がそれをリングへ・・・

ボールは俺たち二人の間を行き交う。

弾むボ−ルの音に、キュッキュッと鳴る体育館シューズ・・・

俺たちのバトルは変わらず続いている・・・

初めて と出会った、その時から・・・。

俺にとって一番最高の時間だ。


そうこうしているうちに、部員達がぞろぞろこの場にやってくる・・・。

部活開始が迫っているのは十分にわかっていた。

お互いスピードは上がりだんだんとシュートを決めるのが難しくなっていく中。

最後にポイントを入れたのは・・・

俺ではなく の方だった・・・。


「今日は私の勝ちだねっ!!」

「明日は負けねぇからな!!」

そう言って差し出した右手を強く握り合う。
恒例になった上がりきったテンションを確かめ合うかのような握手。

それと同時に部活の顧問の先生が吹くホイッスルが体育館中に聞こえ渡った。


「今日はペア対抗戦を行う!レギュラーはコートに入れ!その他の者はパス回しだ!」

そう指示が出ると第一戦目の開始が告げられる。
俺たちは3戦目・・・
必死にボールに追いつこうとする後輩や同級生がミスをするたびに先生の怒鳴り声・・・
大事な試合を近日に控えてるからか厳しさが増してる気がする

「お前らなぁ、やる気あんのか?!
次!ペアエース、入れ!手本だ!!」

「「はいっ!!」」

俺と は、この学校で一番バスケが強いペアだといっても嘘じゃねぇと俺は思う。
いや、バスケで俺たち二人の右に出るやつなんていねぇ。
お互いがパスを出し合い、片方が敵の注意をひきつけ
マークが甘い方にパスを出し、それをシュートする・・・
簡単にいってっけど、お互いのタイミングがあわねぇと到底できっこねぇ・・・
俺たちの必殺技・・・。
あまりに息がピッタリなのか、 と俺は二人合わせてペアエースと呼ばれていた。

相手は同級生のペア・・・
手本のつもりで寄せ集めで作られたインスタントペア。

目で に合図を送るや否や・・・
試合開始が告げられた。


「にしても、あれだよね〜、今日の練習相手!楽勝じゃん!」

クスクスと笑いながら は、持っていたコーラに口をつける。
もちろん、今日は が勝ったから俺の奢り・・・
それはともかく、俺は のことばに頷く・・・

「当たり前だろ?あんな適当に組んだペアで俺たちにかなうはずねぇって」

当然じゃん!っと が飲み終わった缶をゴミ箱に向かって投げる。

綺麗に弧を描いてゴミ箱に吸い込まれていくそれは、カコンッと軽い音を立てる
ナイスシュート!っと笑いかける俺に はヘヘッと微笑、俺の方に振り返る。

そんな、些細な時間・・・

だけど、俺たちに残された時間は残り少なくなっている・・・。


(卒業なんてしたくねぇな・・・)

家に帰って、リビングのソファーに寝転がりながら
不意に、そんな思いが過ぎる・・・。

俺たちは、あと半年もしたら卒業を迎え、それぞれ自分の路を進んで行く・・・。

それは、俺も も違うものを目指して・・・

感傷に浸りながら瞼を下ろすと、 試合の後の満面の笑みの の姿が浮かび上がる。


他校との試合の終了後・・・
俺たちはお互いの拳と拳を、軽くコツンっとぶつける。
勝利したときに見せるアイツの笑顔・・・。
それは俺が見てきた女の笑顔の中で、一番輝いてる・・・

だけど、俺たち三年は今度ある大会試合で・・・引退。

少しでも長くバスケを続けるには、地域の予選で優勝し、県大会へ・・・

そして・・・県大会で優秀な成績を取って、全国大会へと進出しなければならない。

(・・・勝たなきゃ、いけねぇな)

瞼を開くと、まばゆい光が目を眩ませる・・・。
光に手をかざしながら起き上がり、俺は玄関に向かい・・・家を出た。

7時を回り、次第に暗くなりゆくバスケットコートに俺は今、一人で立っている。
7時以降にライトが点灯し始めるこの場所が、俺と の初めてあった場所だった・・・。


(俺たちは初めてあったときも、この場所でバスケをしていたんだ。)

置いてあるバスケットボールを手にして、軽くダンダンッ、っとリズムをつくる。

そして、リングに向かって駆け出す・・・。

シュートを決めるたびにスピードを上げていき、何度も何度もリングにボールを潜らせる。

俺は、バスケが好きだ・・・。
・・・だけど、なんか物足りなくなっちまう

一人でいるコートの中は自分の呼吸しか聞こえないほど静かで・・・
なんか・・・心のどこかに穴が空いたような気がして、仕方なかった。


ー大会前日の朝

いつもより早めに、俺は目覚めた。

一回に下りて、アニキに朝の挨拶をすると驚いた顔で返事を返してくる・・・

普段、遅刻ギリギリに目を覚ます俺を知ってるアニキだし、俺でもビックリしてる。
明日の天気は雨か・・・なんてコーヒー片手に新聞を確認する始末。

そんなアニキに呆れつつも、落ち着いた朝食を済ませる。

学校に行く準備が出来ても、時間にまだ余裕があった。

(今日はチャリで行ってっかな・・・)

最近は全くと言っていいほど使っていなかった自転車を車庫から出し
ゆっくりとペダルを漕ぎ始める、スピードが乗ってきて全身で風を受ける感覚が久々で・・・

俺は・・・目の前を横切る猫に・・・気付かなかった・・・。


「啓介?!どうしたの?!その足・・・」

1限目の授業の終わり近く・・・
教室に入るなり聞きなれた声が俺の耳に届いた。

たいした怪我でもなったのに、今の俺の足には軽く包帯が巻かれている。

休み時間に が、どうして怪我をしたのかと心配そうに怪我を見やり俺に問いかける・・・。

「それが・・・」

朝、余裕があって自転車で学校に向かったのだが、目の前を横切る猫に気付かず
ブレーキをかけて、除けようとハンドルを切ったら自転車ごとこけて足を捻った

「大会前に・・・悪い。」

「そういう問題じゃないでしょ?怪我、どうなのよ?」

謝罪する俺に、そう声をかける の顔が、なぜだか悲しげに見えた・・・


大げさな怪我にみえる包帯を外し、湿布の上からテーピングすると怪我は多少、軽そうに見える。

大切な大会の前の練習・・・見学なんて、俺はゴメンだった。
先生に試合形式の練習に出してもらえるように許可を貰おうとしたが、許可されることはなく
簡単なパス回しを俺は繰り返している。

「こっちにパスまわして!ほら、全体みる!!」

近くにあるコートから の練習の声が聞こえると、胸が痛む気がした。

足が痛むので、と他の部員より早めに練習を切り上げ、帰宅しようと校門まで出ると
ロータリーエンジン特有のエキゾーストが聞こえる。
目の前に現れた白いFCのドライバーを確認して、車に乗り込む・・・。

無言の車内に、エンジン音が響いた・・・。


次の日・・・

「啓介、今日は大会じゃないのか・・・?」

リビングでボーっとしている俺に、アニキが言った。

時計の時刻から、もう既に大会は始まり、第一戦を終えている。

(順調に勝ち進めば、四戦目で決勝・・・か)

「余計なことを言うつもりはない、だが啓介・・・」

『お前は、それでいいのか?』

そんなことを思う俺に、追い討ちをかけるようにアニキの言葉が胸に刺さる。

(それでいいのか・・・?いいわけねぇだろ・・・)

「筋違いだとは思うが、お前の仲間はチームのメンバー全員で全国大会に行きたいと思っているはずだ」

「お前に、自分たちを見ていて欲しいと・・・そう願ってるんじゃないのか?」

「くそぅ・・・どうしたら!!」

どうしたらいいんだよ!!っと吐き捨てる。

「行け、啓介」

「アニキ・・・」

俺は家から飛び出すように家を出た・・・。

足の痛みはだいぶ引いたものの、まだ痛みが残る足で会場まで向かうのは無理に近かったが
俺は必死になって走った・・・。

いつもなら敏感に気付くロータリー特有の音に気付かず、
アニキが数回鳴らすクラクションの音に、俺はFCのナビに飛び乗った。

会場の入口に降り立ち、サンキュっとアニキに言ってから選手のベンチに向かう
チームのユニフォームを素早く身に付け、自分の仲間のもとへと・・・。


決勝戦、前半・・・8:8

疲労と限界に諦めの意識を芽生え始めたメンバーの中で
と数名のメンバーたちは声を張り上げ、少しでも自分たちの得点を上げようと
相手チームのメンバーに喰いついて行く・・・

前半戦終了のホイッスルが鳴り響く会場内・・・

息を切らす にドリンクとタオルを持っていく。

「け、啓介ぇ?!」

俺を見上げる驚いた顔は、涙目になっている・・・

(俺を待ってくれている仲間・・・か)

アニキの言ったとおりで、自己嫌悪を感じる。

に、悪かったなっと言って・・・
俺は監督の下に向かった・・・


「勝手なことをして、すいませんでした!!俺を後半戦に使ってください!!」

道理が通ってないのはわかってます!!、頭を下げる俺の背に
お願いします!と言うメンバーからの声が聞こえる。

「自分からも、お願いします!監督!!」

の、そんな声が俺の心に響いた。


「いいだろう、出場を許可する。」

だが、お前を信じ続けた仲間たちの期待を裏切るなよ・・・

そういう監督に俺がありがとうございます、と頭を下げると
部員が次々と頭を下げる・・・。

俺は、こんな仲間を持てたことを本当に嬉しく思う。


「おかえり、啓介」

の、その言葉が一気に俺の心の隙間を埋めた。

後半戦、開始ー

リズムよく跳ねるボールが、荒々しくリズムを乱し
大きな音を立てて人と人の間を行き交う・・・。

右から左、左から右へ・・・

がボールを手にしたのを見て、俺はリング近くに体を運ぶ。

その間にも、 は俺にパスを送り、俺もそれを返し・・・
二人がどんどんとリングに近づく。

!!」

「OK!!」

そういって、 が決めた。

これで9:8

(あと・・・2点)

再度、相手側に回ったボールを俺がカットして に回す・・・。
ドリブルを繋ぎ、相手の隙間を通って、リングの近くへ・・・

このまま決めれば10:8・・・

そんな簡単にことを運べるはずはない
ドリブルで前進していく を囲むようにしてガードをする、相手チーム・・・

咄嗟の判断で はボールを俺に回す・・・。

後方にいた俺はパスを捕らえたものの、この距離では入るかどうか・・・

「啓介っ!!」

呼ばれた俺の名に俺はボールをリングへ・・・

リングのふちを回り、リングの中に落ちたボール。

タイムアップを知らせるホイッスルがなった瞬間だった。


「あのとき、俺の名前呼んだの、 だろ?」

帰り道、そんなことを言う俺に は微笑んでいった。

「私以外に誰がいんの?」

そうだな、っと返すと嬉しそうに は言った。

「あのとき、啓介が来てくれて本当に嬉しかったんだよ?」

夕日の中でバスケットボールを抱えながら言う

試合の結果は10:8

俺たちのチームが勝ち・・・

全国大会の一歩手前まで行けるチケットを、俺たちは手に入れた。

だけど、俺にはやらなきゃならねぇことが一つ残ってる。


「あのさ、 ・・・俺、お前のこと好きだぜ」

一人の女として、そういう俺に は、今まで持っていたボールを俺の手に渡した。

「じゃあ、また明日ね!」

手元に残されたボールに黒いマジックで書かれた文字。
俺は、その言葉に目を疑ってアイツの背中を見送った・・・。


『啓介
 大好きだよ!!





☆あとがき☆

R「部活夢シリーズ第3弾!啓介さんの部活はバスケットボール部でした〜」
啓「・・・駄文やろーめ」
R「・・・」
啓「なんで俺が怪我してんだよ?!」
R「お黙り!前回の態度、忘れたとは言わせないわよ・・・」
啓「そういうのを職権乱用っていうんだよ!!」
R「ここでは私が法律だから・・・(汗)」
啓「(聞かなかったことにして・・・)次は誰だっけか?」
R「それがまだ決まってないんだな・・・、コレが」
啓「でも、須藤かアニキなんだろ?」
R「一応はね・・・」
啓「・・・」
R「ま、できてからのお楽しみってことで!」
啓「苦情はメール、感想はBbsで頼むぜ!」
R「ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!」