空 線 *The Sky Line*




夏の日差しが残ってる蒸し暑いグランドで、

声を張り練習に励む運動部・・・

その回りを囲むフェンスを更に囲んで黄色い声援を送る女子生徒・・・。

そんなグランドの真ん中・・・トラックの中に は居た。

(今日も人気だなぁ・・・中里先輩。)

黄色い声援の矛先にいる一人の男子生徒に
チラリッとだけ、目をやると
盛大な溜め息をついて、 は、止めていた足を再び走らせた。


そんな少女は、走ることが大好きだった。


高校に入って、真っ先に訪れた運動場を見つめ
どこから湧き出てくるのかわからないほどの 感動を覚えた・・・。

そんなトラックの中をひたすら走っていたのが、
ひとつ上の学年の中里 毅だったのだ。

「あの・・・陸上部ですか?」

足を止め、休息を摂っていた彼に
初めて声をかけたのが、ちょうど一年前だろう・・・。

「・・・あっ!入部希望者、か?」

何かを思い出したかのように問い返した彼に頷くと
嬉しそうな表情で、陸上部の部室まで案内してくれた。

「ふーん、 、さん・・・。俺は、二年の中里だ。」

入部届けの用紙を見て笑った中里。
正直、第一印象が強面で怖い印象を持たせる彼だが
その軽く微笑んだ表情は、とても優しく
根は真面目で、努力家なのだ・・・。

(たぶん、あのときに恋しちゃった、かな?)

顧問の先生を紹介してくれたり、
先輩たちとの交友や、練習時のアドバイスなど
それからというもの、中里は新入生のために
世話を焼いてくれた・・・。
世話好きに見えて、練習は人よりも早くグランドに出て練習をはじめ
人一倍の練習をする彼の信頼は、部活の中でも有名だった。

それは、クラスでも変わらないだろう・・・。
故に、あのモテようだ・・・。

あれから、時日が過ぎ・・・
もう中里は、三年――。
この秋の駅伝大会が終われば、引退。

普通、運動部でも夏休みの半ばで引退するものだが
この地域の学校は、秋に行われる駅伝のため
例外として、陸上部は駅伝大会後に引退をする。

(あと・・・一ヶ月。)

いよいよ、来月に駅伝を控え
今日は、その選手が発表される・・・。

(私も・・・駅伝、出たいなぁ。)

は、走るのが好きだった。

しかし、高校に入ってから、ただ一人で走るのが物足りなくなった。

学校のことを考えると、部活から中里へと思考は回る。

「なぁ、中里。お前さぁ、彼女いるんだって?」

冗談半分で、誰かが口にした言葉に
頭が真っ白になって、中里が否定するとホッと安心する・・・。

は、中里 毅が好きだった。


自分だけではなく、みんなに平等で優しく接する彼を
ときに、恨めしく思うことさえある・・・。

そんなときは、走ることによって気持ちを落ち着かせる。

ただ、漠然と走るのではなく、速く走りたくなったのは
今年の春先だった。
秋の駅伝大会を目標に、自分の精一杯できる練習をした。
短距離よりも、長距離が得意だったのが良かったのか
みるみるタイムは縮んでいった。
休みの日、朝のランニングで調子のいいときは
隣町まで行ったことがあるくらいだ。

「最近、調子良いな! !」

俺も負けないようにしねーと・・・っと
部活後帰宅につく中里の背を見つめ
は、人知れず微笑んだ。
それが、今から一週間前・・・

「それじゃあ、選手を発表するぞー。」

練習後の夕方、顧問の先生が部室のホワイトボードに
選手の名前を書いていく・・・。

[男子]
平井・麻野・北村・西島

[女子]
高田・松岡・原・近藤

[男女混合]
浦田・中里・・・・

(あ、やっぱり中里先輩も出場か)

やっぱり、私には・・・っと俯く に頭上から先生の声が聞こえた。

「男女混合最後の女子選手は・・・本当に迷ったんだが
・・・ にやってもらうことにした。」

「えっ・・・?」

は聞き間違えかと耳を疑い、
バッという効果音が似合うほど勢い良く顔を上げる・・・。
涙で霞む前、ホワイトボードに書かれた名前が一瞬みえた。

[男女混合]
浦田・中里・宮・

「頑張ろうな、

そう背中押されて、今日という一日は終わった。


喜び・不安・自信・・・
いろんな物が交差する中、 は中里のことを想った。

(不安や自信は・・・練習するしかない、か)

いつか中里が言った言葉が、頭の中で反復する。

「よぅしっ!!」


次の日・朝5:30

陸上部の自主朝錬は7時から・・・。
普段は、6時ジャストに起きる は30分も早く目を覚ました。

手早く準備を済ませ、向かう先は学校・・・。
まだ鍵の開いていない部室の前に荷物を置くと
入念な準備運動の後、グランドを走り始めた。

7時10分前・・・

少し、休憩を取ると
見覚えのある顔が の近くにやってくる。

「おはよーございますっ!!」

「おはよう、早いな。」

荷物、部室に入れといてやったから。
そういうと準備運動をし始めたのは
そう・・・中里だった。

いつもは、俺のほうが早いのになぁ・・・っと
つぶやきながら笑うと
準備運動が終了したのか、彼は走り出した。
それに負けじと も後を追うように走り出す。

そんな日が、幾日も続き・・・。
いつしか、二人は一緒に走るようになっていた。


―そして、駅伝当日。

女子は5位、男子は3位と入賞を果たし
残りは、混合種目だけ。

順番は、浦田・宮・ ・中里。

「緊張・・・してんのか?」

「先輩こそ・・・アンカーなのに緊張しないんですか?」

そんなことを言いながら、頑張ろうっと互いに苦笑すると
と中里は、それぞれのスタート地点に向う。


のスタート地点。

声援が近づく中で、 は二番目に走者としてラインに立たされた。

(第三走者で・・・二位)

このままでいけば、2位・・・準優勝は確実だろう。

そんなことを考えると緊張が余けいに高まる。
すると、一位の第二番走者が近づいてくる様子が見えた。
一位は、陸上で有名な高校・・・。
何度か駅伝でも優勝歴があった。
一位のランナーが、第三走者にタスキを渡すとき
三位のランナーと縺れるように宮先輩が入ってきた。

軽く、リードを交えタスキが渡ると は、ゆっくりとだが徐々にペースを上げていく。

(私の番で、順位を落とすわけにはいかないっ!)

たくさんの生徒たちが送る声援は
あたりの景色と共に、消えていく・・・。
耳に入るのは、自分の息遣いと地面を蹴るステップ。

(駅伝、終わらなきゃ良いのに・・・。)

ふっと、そんなことを思うころには
第三位だった、走者は近くにはいなかった。
ゆっくりと、青空を見上げ・・・飛行機雲を見つめながら走る。
ゆっくりだけど、確実に・・・速く。

途中、地面を蹴り上げる足がふらつくが
些細なことを気にしている余裕はない・・・。

(少しでも、一位と差を詰めなきゃ・・・)

だんだんと、横腹が痛み・・・自分の限界を超えるか越えないかのとき
その瞬間、まだ遠いが一位のランナーの姿を見つける。
熱い空気が、身体に纏わりつく・・・首に流れる汗が心地いい。
は横腹の痛みなんて、もう・・・どうでも良かった。

(私が・・・中里先輩に、タスキをつなげるっ!!)

身体が軽くなったような錯覚、タンタンッと軽快に続くリズム。
辺りが、まるで光り輝いているような気持ち・・・。
最後の坂を上れば、第四走者のスタート地点。

(・・・負けるなっ!・・・私っ!!)

っ、こっちだっ!!」
坂を上る後半・・・最後の追い上げ。
一位と二位の差を後4メートルっというところまで
縮めると、コースの先のほうから声が聞こえる。

中里にタスキを渡すと、いきなり名前を呼ばれたことで
ただでさえも、走って上気していた の頬が赤くなった。

、よくやったなっ!!」

「本当!最後の追い上げ凄かったよっ!」

第四走者のスタート地点で待っていてくれた
女子・男子の第三走者の西島先輩と原先輩に
は、ありがとうございます。っと礼を言う。

「それじゃあ、いくか!」

「もちろんね。」

「えっ?!」

そんなとき、 の視界が、ゆらりと揺れた。

「ひゅー、さっすが力持ちだね!」

となりで、笑う原先輩を見下ろしながら
は西島先輩に担がれているということに気づく。

「なっ、ど、どこ行くんですかぁ?!」

「「ゴール地点!!」」

驚きが隠せぬ声色で尋ねた をクスクスっと笑い
声をそろえて先輩二人は言う。

「こーいうのは、全員でアンカーを迎え入れるもんしょ?」

可笑しそうに呟く、西島の言葉を聞いて
は納得したように頷いた。


―ゴール地点付近。

ちょうど、三人がゴール地点に着き西島が を降ろすとき
一位と二位が、並んで走っているのがゴールテープ越しに見えた。
一位二位、共に変わらぬ順位のままで
ここまで引っ張ったのだから、両者とも体力は限界に来ているであろう。

そんな中里の姿を見て は、居ても立ってもいられなかった。

「中里先輩!!頑張ってください!!」

自分の今もてる限りの声で叫ぶと、僅かに中里のスピードが上がったように見えた。

ゴールまで残り・・・6m

・・・4m

・・・2m



「おめでとうございます、中里先輩。」

何度目かわからない、お祝いの言葉を言うと
照れたように苦笑しながら、中里は笑う。

場所は、学校近くの焼き肉屋・・・。

あの後、接戦の末、先にゴールテープを切ったのは中里だった。

そうして優勝の祝宴を挙げようと先生のおごりで
焼き肉屋に来ているわけだ・・・。

時間は、夜の8時。

「すいません、先に失礼します。」

涙を流している顧問の先生に、挨拶を入れ。
先に、失礼しようとすると送るっと言って中里も立ち上がる。

迷惑だろうと思い が断るのも聞かず、危ないからっと二人で店を出た。


二人で、帰る帰り道・・・。

自分の鼓動の音が聞かれてしまうかもしれないっと思うほど
は、緊張していた。

ひたすら無言で歩くと、 は立ち止まった。

それをみて、不思議そうに中里が立ち止まると
は、口を開いた。

「あの、中里先輩・・・。」

「なんだ?」

「あの・・・タスキを渡す前、私の名前呼んでくれましたよね?」

思い出すと、もう一度赤面する彼女を見て
中里自身も顔を赤く染める。

「いや、あの・・・それは、だな。」

シドロモドロになる中里を見て照れたように
は、微笑んだ。

「聞いてください。私、すごく嬉しかったんです。
陸上部に入ったときからずっと・・・中里先輩が、好きです。」

返事は、いりませんから・・・
っと駆け出す の瞳から、一筋の光が流れた。
パタパタっと走っていく、少女を中里はぽかんっと見つめていた。



次の日から、三日間・・・。

陸上部は、連日の練習を労うため部活は休みになった。

学校に行っても、 は、中里と顔をあわせるのを避けた。

(お互い気まずいだろうしねぇ・・・)

が中里から返事を聞かなかったのは
中里が自分を好きになってくれるという、自信が無かったからだ。

(・・・言わなきゃ、良かったかな?)

そんな日が続いて三日目、最後の休みの日。

放課後、 は、教室で帰る準備をしながら
そんなことを思った。

明日から、部活が再開する・・・。
駅伝大会も終わってしまい三年生は、引退してしまった。
だから、部活でも中里と顔を合わせることは無いだろう。

(また、走るのに専念しよう!)

そう思い、ガラッと扉を開けて は、息を呑んだ。

「・・・中里、先輩?」

「・・・少し、話がある。良いか?」

目を見開き驚く を見て苦笑し中里は言った。
それに頷く について来るように促し
中里は、屋上へ向かう。


「最近、涼しくなってきたよな?」

屋上のフェンスに凭れ掛かりグランドを見下ろす中里に
は首を傾げる。

「あの、中里せんぱ・・・」

「俺さ、好きなヤツがいるんだ。」

の言葉を遮って放たれた言葉に
は、俯き下唇をかみ締める。

(やっぱり・・・好きな人、いたんだ。)

あれだけ、やさしい中里に彼女が居ないわけないっと
頭の何処かで、思っていても
の心は、中里への思いを募らせてばかりだった。

「・・・って、どういったら良いんだろうな。」

「・・・え?」

少し照れたような声に は、少し顔を上げる。
回りくどいのは、やっぱ似合わないっと
苦笑をもらしながら、頭を掻く中里は にとって新鮮だった。

「好きだ、付き合ってくれ。」

突然の言葉に は、涙が出るのを抑えきることが出来なかった。

「・・・え?」

「この前の・・・帰り道でお前が言ったこと、本当か?」

涙を流している に手を伸ばし、そっと涙を拭う中里に
は、頷く。

それを見て、中里は微かに微笑む。
沈んでいく太陽が、 の頬にあたる。
の表情は、もう泣いてはいなかった。


夕空に一筋の線、飛行機雲・・・。

それは、青空の下を走ったときと変わらない白い線を描く。

Sky Line それは、愛しい人へ導いてくれる道標――。








R「お疲れ様です!!」
中「ちょ、これ・・・長くないか?」
慎「まとめられなかったんだとよ。」
R「・・・言わないでよ」
慎「なら、もう少しマシなもん書けよ!!」
R「あぅ・・・ご尤もです。」
中「はぁー(溜息)長文駄文を此処まで読んでくれて、ありがとうな。」
慎「部活夢シリーズ、毅は陸上部だったみてぇだぜ。」
R「次回は、京一さん、もしくは涼介さんを書きますね。」
中「・・・前も、そんなことを言ってなかったか?」
R「うっ」
慎「それじゃあ、感想はBBSによろしくな?」
中「切実に感想、募集中だってよ。」
R「それでは、また。」