04【目の前の光と隣り合わせの闇】
一つの銃声が、穏やかな森の中に響き渡る。
その静かな森に似つかわしくない音を、何人の不運の者が聞いただろうか?
驚きに一斉に飛び立つ、多くの鳥たち…乱れる風の音。
ガクガクと震える足で、情けない表情を恐怖に引きつらせ…
それでも…それを感じれるということは、生きていることの証。
「え…っ?」
目の前には、かつての仲間と見知らぬ少女が一人…。
藤原の手からは、銃声の原因であろうモノが黙々と白い煙を上げている。
「2人とも…動かないで。君は武器を下ろして。」
聞きなれない声に、高橋啓介は目の前の少女に目を向ける。
動くな、と言われても、今の目の前の出来事に啓介は立ち上がることさえ出来なかった。
「誰だよ…、アンタ?」
反抗できずに、銃を下ろした少年…藤原拓海は冷たく言葉を発する。
そのとき、啓介は何故自分が生きているかの事実を知った。
銃を握っていた拓海の手からは、赤い液体が伝っている…。
少女が、自身の武器であろう投げ型の小型ナイフを拓海の腕に命中させたのだ。
そして、拓海が抵抗をしないように、彼の首にサーベルナイフを宛がっている。
「僕…?僕は…《鍵》だよ。」
少女が呟いたことに、先ほどのメールの内容を思い出した…。
00…このゲームの鍵となる少女。
少女は、拓海の下ろした武器を奪うとナイフを下ろす。
「藤原っ?!」
まだ幼さの残る少女が、ゆっくりと振り返り啓介を視界に捉えたのと同時に拓海は森の中へと駆け出した…。
「逃げた、か…。危害を加える気は無いのになぁ…。」
彼は、このゲームに参加するつもり、かな…?
その消えてしまった後姿に、彼女はポツリっと呟く。
悲しそうな表情を浮かべる少女に、啓介は首を傾げた。
「君は…大丈夫?怪我してないかな?」
にっこりと微笑、自分を見つめる少女を真正面から見つめたのは
このときが初めてである。
小さく頷いた彼の状態を見て、少女は安堵の息をつく。
「僕は、
。さっきも言ったけど、このゲームの《鍵》。
ナンバーは00。」
よかったよ。君だけでも助けることが出来て…。
その言葉に、啓介は今までの出来事を思い出す…
…そして、また傍らに横たわり温度をなくした嘗ての仲間が頭を過ぎる。
今まで抜けていた腰が、まるで嘘だったかのように立ち上がると
啓介は、彼女に詰め寄った…。
「なんで、なんで、もっと早く来なかったっ!
そうすれば、ケンタだって死ななくて済んだかも知れねぇのにっ!!」
どうして、っと繰り返す啓介は少女は黙って見つめた…。
「…彼のことは、残念だったよ。」
言いたいことをぶつけ、ようやく少しは落ち着いた啓介に
は言った。
その目は、悲しく…なにかを責めているように揺れている。
「だけど、お陰で…君を見つけることが出来た。」
どうして、僕が君を見つけられたと思う?っと問う
を訝しげにする啓介を見つめ、苦笑して少女は話を続けた。
「銃声だよ…。たぶん、逃げ去っていった彼が放った銃声。
そこにいる彼に向けられた音で僕は、この場に誰かいるか分かったんだよ。」
息絶えた彼を見つめ、彼女は言った…。
ケンタを殺すために放たれた銃声で自分が助けられたと知り
啓介は、再び目から溢れそうになる涙をこらえることは出来なかった…。
小さく漏れる嗚咽に
は目を伏せ、この惨劇に巻き込まれてしまった青年たちに
悲しそうな、そして…申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「コイツ。バカだよな…?」
が再び顔を上げたのは、啓介が漏らした独り言を聞いたときだった。
「いつも、いつも…啓介さん。啓介さん。って鬱陶しいくらい
俺について来て…。いつか、俺が目標だ、なんてさ…?」
俺よりも、アニキのが速いのに…。っと言葉を続ける啓介の瞳に
もう、涙は流れていなかった…。
「最期の最期に…俺を助けて死ぬだなんて、バカもいいところだ。」
「…いい、仲間だったんだね。」
悲しみにくれる啓介様子を見て、呟かれた言葉に「あぁ」と彼は短く答える。
その返事を聞き、少女は彼を真っ直ぐに見据えて手を差し出した。
意志の強そうな瞳に啓介は映して…。
「…僕は、このゲームを終らせる。そのための存在。
君が、このゲームを望まないのならば…僕に協力して欲しい。」
こんな馬鹿げた遊びを放っておいてはいけない…。
怒りと憎悪、そして悲しみを湛えた瞳で彼女は言う。
彼女の手に彼の手が重ねられたとき、二人の傍を静かに風が通過していく…。
『啓介さんを頼みます…。』っと
聞こえるはずのない、彼の死んでしまった仲間の声を
は、確かに聞いたような気がした。