03【昨日が僕らを呼んでも、僕たちは戻れない】
「そんなに悲しむようなことじゃないじゃないですか。」
温もりの消えたケンタの身体の側で嗚咽を漏らし続ける俺を見て、
藤原は冷たく言い放つ。
(コイツは、一体…ダレダ?)
うっすらと微笑みさえ浮かべるコイツは、
本当に、あの藤原なのだろうか?
Dのダブルエースとして、同じ夢を追い続けた仲間なのだろうか…?
それより、コイツは…
人を殺しておいて、なんで平気な顔をしてやがるんだ…?!
「藤原…お前…っ」
―どうして、ケンタを?―
そう口に出そうとした声は、驚きのあまりに声にならなかった。
(これが、夢ならばさめてくれ…)
正直、信じたくはなかった。
襲ってくる寒気に恐怖さえ感じる…。
目を逸らすことの出来ない現実…。
自分の命が危機に晒されている、余りあまる緊張。
ごくりっ。と、やたら唾を飲む音が大きく聞こえた…。
「はっ…?藤、原…?」
目を見開く俺の額に
目の前の男は…なんのためらいもなく、銃口を向けていた。
「本当、あんた邪魔なんですよ…」
え…っ?
「いつも金魚のフンみたいに涼介さんに付き纏って…」
こいつ、何を…?
「あんたさえ、いなけりゃDのエースは俺一人なのにっ!!」
…なんで?
「藤原…、なにを、する気だよ…っ?」
ガチャリッと安全装置を外す音が耳につく。
「死んで下さいよ。」
静かに告げられた、そのことばに
俺は、深い絶望に包まれた…。
引き金にかかった指は、その先の俺を仕留めようと徐々にに引かれていく。
恐怖の性か足は震え、避けることも、逃げることも、ままならないまま…。
俺は、その光景を見ていることしか出来なかった。
引き金が完全に引かれる寸前、俺は強く強く目を閉じる…。
穏やかな風ふく、森の中で
一弾の銃声が
不協和音として辺りに響き渡った。