02 【信じていた仲間の裏切り】




とんでもないゲームに巻込まれた。
現実とは掛け離れた悪魔のゲーム。
ゲームオーバーは、死のサバイバルゲーム…。
電源を切ることもリセットボタンを押すことも出来ない、現実…。
ただ、ひたすら前に進むしか術かない。
…ゲームをクリアしてエンディングを迎えるために。
そんなもの、誰も望んじゃいない…
少なくとも、このとき、俺は、そう信じいてた。
ただ、自分の居場所に帰りたいだけだ、と…。


そして俺は、木々たちの間から見覚えのある人物を見つけた。


こんな馬鹿げたゲームに乗るヤツは、いない。
そう思うがこそ、やっと出会えた仲間の元に駆け寄ろうとしたとき
…俺は足が竦んだ。
何故なら…


「ふ、じ、わら…?」

互いをライバルと認め合い、共に敵地に乗り込んだ仲間。
二人でエースと呼ばれた、そんな男が…。
俺の前に背を向けて立っていたのだから…

その右手に、黙々と新しい煙を上げ続けるリボルバーを手にして……。


「あれ?啓介さんじゃないですか…。」

クルリと背を向けていた身体を俺の方に向け、
いつもと変わらぬ口調で俺の名を呼ぶ藤原は、少し笑っていた…。

その狂気に満ちた顔に、俺の背をゾクリと嫌な汗が伝っていった。


藤原の向こうに…倒れている物を、俺は見たくなかった。


見たら、このゲームの存在を確立させてしまうから。
…どうしたら良いのか、わからない感情に押し潰されてしまいそうだから。


「お前…何やってるんだよ?」

震える俺の声…。
何故、震えているのか自分でも、わからなかった。
目の前にいるのは、仲間のはずなのに…。

「何って…ゲーム、ですよ。生きるか死ぬかの。」

そう言うと藤原は足下に転がる物体を足で蹴った。
その瞬間、遮る物が無くなった前方に、先ほど目を霞めたものが…
見たくなかったものが、俺の視界に入った。

倒れている人物…。それは…俺の弟分の中村賢太だった。


「け、ケンタ…っ!」

まだ温かいケンタに駆け寄る俺を、藤原は静かに見つめていた…。


「なぁ、嘘だろ?冗談キツいぞ、ケンタ…。」

小さく揺さぶりを掛けながら問う俺の声も虚しく…
ケンタの身体からは毒々しいほど赤い液体が流れる。

「起きろよ…こんな所で寝てたら邪魔だろ?」

いつもの悪ふざけをしているように苦笑する俺の顔は
信じられないくらい、引きつっていた。

「なぁ…立てよ、ケンタ。お前、言っただろ?
 S14で啓介さんみたいに…俺みたいに速くなるって。
 お前、RedSunsに入ったとき、そう言ったじゃねぇーーかっ!!
 なぁ、ケンタ!!」

不意に頬に伝う温かい液体、それが涙だと俺は気付かなかった…。


「…っ、け、すけ、さ…っ。」

はっ、と消え入りそうに小さいケンタの声に俺は顔を上げた。

「あ、れ…?泣、いて…ですか…?誰が…啓、すけ…さん、を」

気力の残っていない腕で懸命に俺の涙を拭う。

「もう良い!良い…から、頼むから喋るな!」

「お、れ…っ、レ、ッド…サン…ズ、に入…れて、誇、り…でした。
 …啓介、さん、の…、はし、り…っ、あ、んなに、近くで…っ」


俺の静止の言葉を聞かず、静かに話すケンタの声に耳を傾ける。

「ホ、ント…に、ありが、と…ござい、まし…た…っ」

確かに聞こえた小さな礼に、俺の目の前はぼやけてケンタの顔が見えなかった。

ポタリと下ろされた手…その手を掴んで悲痛に嘆きを上げる俺の声を
一陣の風が消し去っていく。 それは、まるでローソクの火を吹き消すかのように…
俺の手の中でケンタの手は温度を失い…ヒンヤリと冷たくなっていった。



中村賢太 死亡
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