12370hit☆藍様からいただきました☆
真夜中は純潔・2(中里)
「それじゃそろそろ始めようか」
約束の土曜日。
時刻は午後11時を少し回っている。
妙義山駐車場は静かな緊張感に包まれていた。
「ダウンヒルからでいいか?」
ロードスターのドライバーが低く言う。
目にかかる重たい黒髪のせいで表情は読めない。
「さっさとヤろーぜ。待ちくたびれた」
慎吾が靴底で煙草を踏み消す。
EG6に乗り込む直前、
へ視線を向けて唇だけで笑った。
「見てろよ
。ナイトキッズのナンバーワンはこのオレだ!」
「うん、頑張ってね慎吾〜」
はひらひらと手を振った。
ダウンジャケットが擦れてさらさらと小さな音がする。
宮原のカウントで2台のバトルはスタートした。
「毅、あのロードスター速いぞ。200馬力くらい出てる」
「ああ…」
「あいつらどこのチームなんすかね。この辺じゃ見掛けないけど」
「ロードスターはともかく、あのFDすげー派手っスね」
「あれって雨サンとこのエアロじゃないかな」
が空き缶を持った手でFDを指した。
「RE雨宮?」
「そうそう。オールペンしてるみたいだし、お金かかってるね」
「じゃあ見た目だけってことすか?」
「いや―あのFD、多分巧い」
険しい表情で毅が呟く。
「毅…大丈夫なのか
は…」
「本人がやるって言ってるんだ。止める権利は俺には無い」
自分を納得させるように言うと長い溜息を吐く。
突然吹いた冷たい風に首をすくめる
に目を向けて、また溜息が零れた。
ポケットに入れていた
の携帯が鳴った。
『勝ったぜ
。上りこっちからだろ?』
「うん。そっか、勝ったんだ。おめでと」
『バーカ、当たり前だろ。早く来いよ
。オレがカウントしてやっからよ』
ぷつりと切れる通話。
慎吾からの電話はいつもこうだ。
突然かかってきて突然切れる。こっちの都合なんて関係ない。
彼らしいといえば―確かに、彼らしい。
「終わったって。慎吾勝ったみたい」
が振り向くとメンバーが固唾を呑んだ。
毅が唇を噛み、FDの元へ向かう。
「ダウンヒルは終わった。ヒルクライムのスタート地点まで移動する」
「わかった」
「一つ、聞きたいんだが…」
「ああ」
「どうして
をバトルの相手に選んだんだ」
FDのドライバーはちらりと
に視線を向けた。
「…白いから、かな」
「何だと?」
「積もったばかりの雪に足跡つけたくなるだろ?それと一緒さ。
彼女を初めて見たときから無性に―汚したくなってバトルを申し込んだんだ。
…受けてくれるとは思わなかったが」
薄っすらと笑んだ。
上辺だけの冷たい笑顔。
「仮にオレが勝ったとしても、別に彼女をどうこうするつもりはない。心配しなくていいよ、中里サン」
毅は言葉に詰まった。
への思いを見透かされたような気がして。
(ロータリー乗りってのはどうしてこう癇に障る奴ばかりなんだ…)
「カウント行くぜ!」
慎吾が声を上げた。
ロータリーと4WDのエンジン音が妙義山に響く。
スタートの合図と共に飛び出す2台。
先行は
のR32。
FDは
の少し後ろを追うように駆けていく。
「よっしゃアタマとった!逃げ切れ!」
「FDはわざと後ろについたんじゃないのか?」
メンバーがざわつく。
皆が一様に、大きな不安と微かな期待を抱いている。
もしかしたら、勝てるかも知れない。
でもそれは微かな―本当に僅かなもので、口にするには憚られた。
「どう思う、毅?」
「―嫌な予感がするな」
のダウンジャケットを手にした毅が呟いた。
脱け殻のようなそれは柔らかく、それでいて堪らなく不安を掻き立てる。
「オイ…縁起でもねぇこと言うなよ」
「後を追う」
闇色のR32に乗り、毅は2台の後を追って駆け上っていった。
(FD、何か企んでる)
R32の中、
はバックミラーに映るFDにチラリと視線を向ける。
無理に寄せてこないのは、いつでも抜けるという余裕からか。
嫌なプレッシャーが
の全身を覆う。
コーナーに差し掛かるとFDがスピードを上げた。
ついに抜きにきたかと思ったその時。ガツッ、と左リアから鈍い衝撃が走った。
バンパープッシュ。
相手にしてみれば大したことのない―バトルにおいては「普通の」行為。
しかしバトル経験のない
は頭の中が真っ白になった。
150km/hを超えるスピードで走っていたR32は、コンクリートウォールへズルズルと引き寄せられていく。
そこは、以前毅がEVO4とのバトルでクラッシュした場所―
「だめ、そっち、違う…」
GT-Rが誇る直列6気筒DOHCツインターボもアテーサE-TSも、
ドライバーからの指示を完全に失い意味を成さなくなった。
ステアリングを固く握り締めて微動だにしない
の視界の端を、緑のFDが悠々と走り抜けていった。
右フロントが壁に接触し、
は震える足で目一杯ブレーキを踏み込む。
R32が停止したのは50m程先だった。
バケットシートから抜け出した
はフロントで立ち尽くす。
削れたバンパー、ボンネット側に食い込むフェンダー、割れて飛び散ったライトカバー。
「…ごめ…」
ぽつりと呟いてへたり込んだ。
触れたタイヤはひどく熱い。
涙が溢れて止まらなかった。
恐怖よりも、毅との約束を守れなかったことが悔しくて―
激しく揺さぶられた脳が思考を鈍化させる。
「
!」
へたり込んだまま傷ついたフロントをさすっていると、名前を呼ばれた。毅の声だ。
「
、大丈夫か!」
「―僕のせいで、32に、痛い思い、させた…っ」
自分の声が震えていることに
は気付いていなかった。
声だけではなく、その細い身体も。
毅は唇を噛み
を抱き寄せる。
俺が来たからもう大丈夫だと―言いたかった。
それを言ったらなにかが終わってしまう気がして、毅は言葉を呑み込んだ。
「病院に行こう。
も痛かっただろ?」
は泣きじゃくり毅にしがみ付く。
ゆるゆると髪を撫でてくれる毅の掌に、どれだけ救われただろう。
散乱するR32の破片は月光に照らされ、皮肉に思える程綺麗に輝いていた。
毅夢なのに慎吾と対話して2話の後書きに代えます。
藍 :毅夢2話めです。
慎吾:おい。オレのバトルシーンはどうした。
藍 :いやー…。
慎吾:ばっさりカットしてんじゃねーか。阿呆。
藍 :いいじゃん別にー。勝ったんだし。
慎吾:フン。オレが負けるわけねぇだろ。
藍 :はいはい。
慎吾:
は…負けたのか?
藍 :…そういうことになりますかねぇ…。
慎吾:そうか。でもまだ続くんだろ?
藍 :まだ続きます!
慎吾:これからどうなるのか、ちょっと気になるな。
藍 :あら!慎吾が興味を示しましたよ!
慎吾:うるせー。RAYが気に入ってくれればそれでいいんだよ。
藍 :ということでお付き合いよろしく頼みます…。
☆感想☆
初バトル!!!
初黒星!!!
(そこは喜んでいいのだろうか・・・)
R32が大怪我(?)したことに涙・・・
はじめから最後まで心臓がやばかったです。
ありがとうございますです!!!
頭を撫でる毅さんにキュンってしちゃいました(照)
感謝のことばが私の頭の辞書にどれだけ少ないのかを
改めて感じましたです・・・