薔薇乙女の月光歌【運命】
「お怪我は、ありませんでしたか?」
邪魔者の乱入に寄って、荒れてしまった部屋の中に
目を丸くしながら座り込む私に白名月は手を差し伸べる。
「あ、りがと…。さっきのは、なんだったの?」
辺りに散らばる黒い羽を見て、先ほどの出来事が夢ではなかったと
改めて実感する…。
「あとで、説明します。…いまは、この場を先になんとかしなくては。」
破れた窓ガラスが飛び散り、壊れてしまった家具たちを見て…
白名月は、ゆっくりと左手を掲げた。
「ローティ…。」
静かに呟く彼女の声に反応して、
白い光の珠がフワフワと白名月の回りをまわりながら出現する。
その光に、にこりと微笑み、白名月が目を閉じると光の珠から
眩いほどの白い光が室内を照らしだす…。
すると、どうゆうことか…まるでビデオテープを巻き戻すかのように、
家具や窓は修復し、
辺りを埋めてくしていた黒い羽は、一本も残らず綺麗に何処かへ消え去っていった…。
「な、に…今の?」
驚いて、その行動を見ていた私を優しく白名月は立たせソファーへと座らせる。
少女の笑顔を受けて、私は幾分かの落ち着きを取り戻した。
「驚かせてしまって、ゴメンなさい。
今のは、この部屋の時間のゼンマイを元に戻したんです。」
白名月の話しに寄ると、
物や空間、人には時間のゼンマイというのが存在するらしい。
そのモノや空間たちが送って来た時の流れを、
その時間のゼンマイで巻き戻した。
だから、家具たちは羽の攻撃を受ける前に姿を戻したということらしい。
その説明を頷きながら聞くと、細かなところはわからないが
大雑把に白名月が行なった行動に納得が言った。
「じゃあ、あの羽は、なんだったの?」
数分前、自分たち目掛けて何本も突き刺さって来た黒い羽…。
今、思い出しても、私は確実に死ぬかもしれないと、思っていたから…。
すると白名月は、少し考えて口を開いた。
「たぶん、あれは…僕の姉妹たち。恐らく姉の仕業です。」
「姉妹…?!」
白名月に姉妹がいたことも驚きだったが、
姉が妹を攻撃したという事実の方が私には信じられなかった。
「はい。僕たちは、ローゼンメイデンと呼ばれています。
世界最高の人形師ローゼンが作り出した最高傑作だと。
僕は、その第8ドール…。」
「ち、ちょっと待って!第8ドールってことは、何人くらい姉妹がいるの?!」
「ローゼンメイデンは、全部で八体…。
僕が末のドールです。お父様は、僕を作った後どこかに言ってしまわれました…。」
フッと俯き、寂しそうに笑う白名月に私は、どう声を掛けたら良いのか、
わからなかった。
「僕たち、ドールは…お父様に会うことが出来ないんです。」
「会えないって…どういうこと…?」
そして、白名月は俯いた顔を上げて自分たちに与えられた
運命を私に教えてくれた…。その悲しすぎる物語を…。
「お父様は、最高の少女を求めておられます・・・。
アリス、と名付けられた称号を持つ、至高の少女を・・・。
その少女は、お父様の理想なのです。
アリスとは、どんな花より気高く、どんな宝石より無垢で
一点の穢れもない、至高の美しさを持つ究極の少女・・・。
そして、お父様はアリスを求め、
僕たちローゼンメイデンを御作りになられたのです・・・。
しかし…僕たち8体のドールの中にアリスは誕生しませんでした。
お父様は、アリスとしか、お会いしようとなさいません…。
アリスになるためには、全てのローザミスティカが必要…。
そのローザミスティカを奪い合うために、作られたのがアリスゲーム。」
「ローザミスティカ・・・?」
「ローザミスティカは、僕たちローゼンメイデンの命の源・・・。
これを奪われると、僕たちは僕たちは話すことも動くことも出来ない
ただの人形になる・・・。
今、こうして
様と話している時間も…全てを失うんです。」
全てを話し終えて、節目がちな表情になる白名月を見て
私は、胸が締め付けられる思いがした。
だって、あまりにも残酷過ぎる物語だから・・・。
「・・・ねぇ?白名月。私に出来ることはないの?」
寂しそうな表情の偽りの少女をゆっくりと抱き寄せる。
肌の温もり、柔らかさ・・・人間の少女となんら変わりない彼女。
でも、私たちからには想像も付かない重い運命を背負っている少女・・・。
その幼い少女を見ると、白名月は幸せそうな表情で微笑んだ。
「
様は、なにもなさらなくて良いのです。
僕に、少しの居場所と貴方の笑顔を与えてくれれば、それで。
それだけで、きっと僕は、強くなれるから・・・。」
遠慮がちに私の背に手を回す少女を私は抱きしめる。
「大丈夫・・・。私が貴方を守って見せるから・・・。」
白名月を守りたい・・・。そんなことを、私は初めて思った。
まだ出会って間もない少女に・・・。
少なからず・・・私たち2人が出会ったのは運命なのだろうから。
私は・・・白名月と共に戦う。